【ナニワ金融道】銀行マンも狼狽する○○不渡りなんて誰が知ってた?

縦割り行政の弊害が生んだ、船舶売買の歪みを突いた詐欺の話。

このエピソードで、海事代理士という資格を初めて知り、船の大きさによって管轄が違うということを知りました。

もっとも驚きだったのが、手形の件。

善意の第三者には対抗できないと、帝国金融の社長ですら思っていたことが、裁判所が発行するゼロ号不渡りで対抗できるという事実。

法律のこと良く知らんと、いいようにやられまっせと青木先生に言われているようです。

失敗をおそれる組織

ソーシャルビル経営をする末期が、32tのクルーザーを2億で購入し、3億で売りキャピタルゲインを狙う。

4000万円の現金と1億6000万円の手形で購入するため、4000万円の融資を帝国金融に打診。

転売先も決まっており、問題のない取引だと考えた灰原、ただベテラン揃いの帝国金融でも船舶売買の経験者はいない。

結果的に詐欺に遭いヘタをうった灰原たち、帝国金融の面々からもよく分からないものに手を出したことをなじられる。

良く知らないのであれば、灰原も事前に調べることでもしかしたら回避できたのかもしれない。

それよりも、失敗した人間に冷たく当たり、新たなことに挑戦する芽をつぶしがちな硬直した組織に対する著者のイラだちのようなものを感じます。

船舶売買の落とし穴

末期の融資依頼を受け、船舶の確認をする灰原たち。

船検証で持ち主を確認し、帝国金融の顧問弁護士の悪徳に名義変更手続きを依頼する。

名義書換えが済み、鍵を受取り船舶に乗り込む灰原たちに、詐欺集団から因縁をつけられる。

ここで用意周到な詐欺案件であることを知ることになる。


出典:「ナニワ金融道」第17巻

  • 5t未満…日本小型船舶検査機構
  • 20t未満…都道府県の農林水産事務所
  • 20t以上…海運支局と法務局

船検証で名義変更できるのは、5t未満のプレジャーボートに類するものだけ。

船舶の売買は自動車に比べれば圧倒的に少ないので、こうした事実を知っている方が稀なことでしょう。


出典:「ナニワ金融道」第17巻

船舶には国籍証書と船検証があることすら、まったく知りませんでした。

弁護士である悪徳も知らずに騙されたわけですが、なまじ知識があると人に聞けないという人間心理を皮肉っているようにも思えます。

餅は餅屋

さて、泣く子もだまる金融屋が、詐欺にあっておとなしくしているはずもなく。

2週間以内に手を打たないと、2300万円もの借金を背負わされてしまうことになった灰原。

このあたりは会社が守ってくれるという、サラリーマンであれば当然の思想を粉砕してしまいます。

雇われ形態こそ会社員ですが、責任という点においては限りなく個人事業主に近い金融屋。

わずかな痕跡を頼りに詐欺集団の痕跡を辿っていく。

その刹那、ようやく海事代理士の落振の存在を思い出す灰原。

最初のうちは単なるタカリだと思われていて落振が、実は船舶以外にも類まれな知識を見せ始める。

やはり餅は餅屋であることを痛感させられたに違いないでしょう。

ゼロ号不渡り?

金融屋の灰原はおろか、社長の金畑ですら知らなかった「ゼロ号不渡り」

これは裁判所が支払い停止命令を出すことで、手形を不渡りにするという、落振いわく弁護士ですら知らないものらしい。

青木先生がよく調べられたと思いますが、そもそもその存在を知らなければ調べようがないわけで、色んな職業を転々とした先生ならではのエピソードです。

裁判官の心情や司法の心の機微まで詳細に描きあげ、ナニワ金融道のラストを飾るにふさわしい大作だと思います。

まとめ

落振の活躍により、見事手形を取り返したうえに、逆に2億円をせしめた帝国金融。

このあたりのくだりは、後のミナミの帝王に多大な影響を与えている気がします。

このエピソードで特に感じることは、灰原はじめ帝国金融の人間は常に前向きであるということ。

失敗すれば自分以外の人やモノのせいにして、責任逃れを試みるのが人間だと思いますが、灰原たちには一切それがなく、文字通りの自己責任で行動している。

逆に、帝国金融に研修に来ていた警視庁エリートの都沢は、責任論に終始しようとして、対照的に描かれています。

多くの組織で今も起こる、責任転嫁への青木先生なりの強烈なアンチテーゼなのでしょう。

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